【名品ハンター】COMME des GARÇONS HOMME レギュラーカラーシャツ 【AD2002】
母の愛情、シワ加工の死
日本を代表するドメスティックブランドである「COMME des GARÇONS HOMME」のシャツ。本来はもっとシワシワな感じに加工が施されていた。写真もしわくちゃだけど、これは置いて撮ってるのと、保管する環境が悪かったせい。
よくある「ダメージジーンズの穴を縫われて直される」的なエピソードで、家で洗濯した時についでにアイロンがけをされてシワが伸びてしまった。
母の愛情、シワ加工の死。
古着だったからよかったけど、新品で買ってたら立ち直れなかったと思う。
そもそもシャツにシワ加工とかニットに縮絨加工を施してあえてボロく見せるのがギャルソンを象徴する定番なデザイン。それにアイロンかけて全然別物にするマインド。
1980年代にコム・デ・ギャルソンは過激な加工の「ボロルック」でモードファッションにあたらしい価値観を持ち込んだけど、俺の母親がシワ加工をアイロンで取り去るのもそれと同じようなこと。
ギャルソンが新品をシワ加工し、それをあえて母親がアイロンでシワ伸ばしすることによって、このシャツは「完成」した。
このグレーに白字のタグが田中啓一というデザイナーがデザインしていたときのもの。
通称・田中オム。
ギャルソンにおける日常服のメンズラインがHOMME(オム)。ブランドの中で多くのラインがあるけど、ギャルソンの中ではもっとも古いメンズラインである。コレクションラインほど奇抜ではなく、比較的ベーシックめの服を出しているところだと思う。
ブランド創設者の川久保玲から始まり、田中啓一、渡辺淳弥という風にデザイナーが交代しながら続いている。
ちばあきおの『キャプテン』で喩えるなら田中オムは丸井編にあたる。ちなみに田中啓一さんは2003年にギャルソンを退社しているので、2002年製のこのシャツは田中オムの最後期の服だと思う。
レギュラーカラーで、シワ加工以外はごく普通のシャツ。素材をパーツごとに切り替えたりするようなギャルソンっぽい意匠がないので、気負わず着れる。唯一のギャルソンらしさであるシワ加工もなくなったので、さらに普通な感じに。身幅がゆったりとしていて少し大きめ。このサイズ感は今着てもけっこうしっくりくると思う。
縫製責任者のスタンプが押してある。もし服にクレームとかあった時は、このスタンプを押した人が怒られるんだろうか。
自分はあまりコム・デ・ギャルソンというブランドに詳しくないので、オムをデザインしてきたデザイナー達の特徴など細かいことは分からない。田中オムという言葉もさっき知った。
(シワ加工もアイロンで伸ばした)
このシャツからは日常着としてちょうど良い具合のクラシックさというか普遍性を感じる。